さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
What should we do now? Explore the history of Japan and the world.
〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
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xiii’’’’’’’)番外編6 強欲資本主義と日本(Ⅲ)人こそ最大の資源
強欲資本主義にあい対し、日本経済を今後どのように展開してゆけばよいのだろうか。解決の指針を探ってみる。
今後の経済政策
経済の舵取りをどのようにして行けば良いのだろうか?早稲田大学の若田部教授は次の三つの原則を提言している(脚注4)。
1)不況の克服(安定化)
2)経済成長(効率化)
3)所得の再配分
「不況の克服=安定化」1)を目的とするにしても、具体的には、政府は、従来型の公共事業に頼ってはいけないこと。むしろ、デフレを意識して経済を下支えすること。
日本の中央銀行である日銀との政策協調をするべきあること。その場として国家戦略局を事務局とした政府・日銀の協議体を設けることが1)で提案されている。
「経済成長の維持=効率化」2)の内容としては、自由闊達な創造性と技術革新へ導くよう規制の撤廃を進めるべきであること。民間活力を導入すべきであること。アジアの成長を取り込むことが挙げられている。
「二〇二〇年までの温暖化排出ガス一九九〇年比二五%削減」という公約を達成するためにも、是非必要だと強調している。
「誰もが人並みの生活をおくる=所得再分配」3)については、政権与党はアイディアに困らないだろうけれども、まずは貧困の実態をつかむ統計調査を行うことからはじめてはどうかと提案されている。
日本では所得の再分配の対象となるべき人々が正確には何人くらいいて、どれくらいひどい状況なのかを把握した信頼のおける統計がない。議論の土台を作るためにも必要だとしている。
私は、無駄を徹底して排除した上で、社会保障番号制度と消費税導入も具体的に議論して行くべきであると考えている。
「所得の再配分」3)をしてゆく上で、公平感があり効率的で行き届いた行政福祉サービスを迅速に受けるためには絶対に避けて通れない。また、後述する「人への投資」を充実させるためにも必須だと思うからである。
若田部氏は、「いわゆる『構造改革』路線は、1」安定化と3)所得再分配をないがしろにし、2)効率化を重視しすぎました」、2)を重視しすぎることになった理由を「サッチャー=レーガン時代の『成功体験』から誤った教訓を学んだことにある」と述べている。
「サッチャーやレーガンが登場した時代は高度のインフレと不況の併存でした。そのときにはインフレを抑制する緊縮的マクロ政策と、規制緩和などのサプライサイドの強化はともに良い循環をもたらす正しい政策でした。
しかし、デフレ不況のときに必要なのはサッチャー=レーガン的な政策ではありませんでした」と。
現在の与党は、実績がない上に3)の所得再分配だけを強調して政権を取った。1)と2)について「経済政策がない」と非難されることしきりである。しかし、若田部氏は非難しているのではなく、ここで実績をあげれば大きな信頼を勝ち得ることになると提案している。
人こそ最大の資源、技術革新は人と組織から
経済成長への道筋をつけることの他に、いま絶対にやらなければならないことは将来への投資である。ピーター・ドラッカー(脚注9)の言葉を借りるまでもなく「人こそ最大の資産」であるゆえに、今こそ日本は教育に力を入れ、人に投資して行くべきである。
図3 ピータードラッカーのマネジメント哲学を広く知らしめた24万部のヒット作
(岩崎夏海著「もし高校野球部の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』
を読んだら」ダイヤモンド社)
江戸時代でも、明治時代でも、戦後の混乱期でも、どんな時でも日本は人づくりからはじめた。それと同様にすれば良い。
ただし、今のこの時代の日本の教育で育つのはどういう人物だろう。大変な危機感を持っている。既に当ブログ内で次のように書き嘆息した(脚注10)。
「自由とか権利のみを教えられ、義務や責任をほとんど教えられていない。権利を、自分のわがままを他の人に納得させることと取り違えている。自由を、自分が放縦であっても他人の指図を決して受けないことと取り違えている。
そういう子の何%かは、学校ではモンスター・ペアレンツ、病院ではモンスター・ペイシェンツやモンスター・ファミリー、一般店舗ではモンスター・カスタマーやモンスター・クライアントと確実になってゆく」と。
これは多分にマスコミと戦後自信を失ってしまった親と教師の影響だろう。教職員組合の思想のせいだと言う人たちもいるが、はたしてそれだけであろうか。私は特にマスコミ、主に新聞の責任は重いと考えている(脚注11)。
学校が悪い、教師が悪い、親が悪い、世間が悪い、政府が悪いと、何でも人のせいにするのではなく、自分から課題に直面し解決を目指してゆく人物を育成すべきである。他人をあてにしない自助の心、政府などのせいにしないで自分で道を切り開く姿勢。大事である。
そういった人物から、技術革新が生まれてくる。良い組織が創られてゆく。雇用も創出されてゆく。需要も産み出されてゆく。経済も再生されてゆく。国力も上がってゆく。世界にも貢献できてゆく。
前述の神谷秀樹氏は次のように述べる(脚注5)。
「物造りといっても、日本もアメリカももう『価格競争力』で競うビジネスでは勝てない。中国、インド、ブラジルなどに負ける。『価値競争力』で勝たねばならない」という神谷秀樹氏は次のように主張する。
「経済危機を克服するのは、政府の借金による大盤振る舞いでは断じて無い。我々一人ひとりが技術革新に挑み、社会の抱えるテーマを克服する個別的な新商品やサービスを開発し、価格競争力ではなく、『価値競争力』でもって世界で競って行けるようになること」
「そのためには教育を充実し、また自然環境だけではなく、社会環境を整備することも怠ってはいけない。むしろそうしたテーマに挑む時に、真の新産業が興ってくるものと確信する」
「政府に我々の明日を開く力は無い。その力があるのは我々『人民』であることを再確認し、ともに働きたいものである」と。(つづく)
脚注
2)浜 矩子「ユニクロ栄えて国滅ぶ」安売り競争は社会を壊す恐るべき罠だ、文藝春秋、10月、2009年
4)若田部昌澄「民主党よ、経済政策の基本に戻れ」拝啓 日本国内閣総理大臣鳩山由紀夫様
5)神谷秀樹「ウォール街『強欲資本主義』は死なず」文藝春秋、10月、2009年
9)http://ja.wikipedia.org/wiki/ピーター・ドラッカー
11)「頑張れ朝日新聞」:日刊紙は一度廃刊するくらいの覚悟で、教育上悪い無責任な批判は絶対にやめて再スタートするべきだ。別項目を立てて詳しく述べる予定。
12)稲盛和夫「鳩山民主よ勝って兜の緒を締めよ」文藝春秋、10月、2009年
(2638文字)
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2010年4月4日日曜日