さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
What should we do now? Explore the history of Japan and the world.
〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
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〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
xiii’’’)番外編2 減点主義との訣別
日本人は、何故、何にでも点数をつけたがるのだろう。しかも、満点があってそこから減点してゆく方式。
小学校から大学まで、会社に入っては労働の現場から経営者に至るまで、どこにいようと点数をつけられ続ける。成果主義、業績主義、評価主義が徹底しているところでは、さらにその傾向が強い。
新聞などマスコミを見てもそうだ。ともかく減点主義だ。ケチをつける。何をしても文句しか言わない。褒めるということがない。認めるということがない。日本の新聞は国の役に立つことは伝えず、ひたすら日本を貶めている、と嘆息して言われるほどである。
私は覗いたことがないが、インターネットの「2チャンネル」サイトに「サルでも出来るマスコミ式発言表」というのが載っていたそうである。面白いものを引用すると、次にようなものが並ぶという。
妥協して落としどころを探ると 法案は骨抜きだ
政治に民意を反映させ法案を押し通すと 一方的だ、独裁だ
部下に大きな権限を与えて任せると 丸投げで無責任だ
官邸主導で進めると 独裁政治は許せない
決断を下すと なぜ急ぐのか、慎重に議論すべし
保留すると また先送りか
支持率が上がると 人気取りの政策
支持率が下がると もっと国民の声に耳を傾けよ
靖国に行くと 近隣諸国の許可を得たのか?
軍靴の足音が聞こえる
靖国に行かないと 国民との公約を破った
景気対策をすると バラまきだ
景気対策をしないと 政府は日本の景気を
底上げするつもりがあるのか
増税を唱えると 国民をさらに苦しめるつもりか
増税を行なわないと 逼迫した財政をどうするのか
という具合だ。たしかにこの表があれば、新聞社に入った当日から社説が書ける、と納得するほど。何をしても文句しか言わない。ケチしかつけない。「私はこう思う」と自分の意見でモノを言うことをしない。あたかも皆がそう言っているからという論調が多い。
マスコミがすべきことは、自分の立ち位置を鮮明にして、その立場の人たちを褒めることなのではないだろうか。自分に厳しく他者に寛容な人など、この世からいなくなったのではないかと思えるほど。自分のなすべきことをせずに、他人に要求ばかりする人ばかり。
子どもたちも然り。自由とか権利ばかり教えられ、義務とか責任をほとんど教えられていない。権利を、自分のわがままを他の人に納得させることと取り違えている。自由を、自分が放縦であっても他人の指図を決して受けないことと取り違えている。
そういう子の何%かは、学校ではモンスター・ペアレンツ、病院ではモンスター・ペイシェンツやモンスター・ファミリー、一般店舗ではモンスター・カスタマーやモンスター・クライアントと確実になってゆく。
もういい加減ケチをつけるのをやめよう。そう言いたかったところへ、またまたマニフェスト選挙とやらである。マニフェストを各団体が採点するという。どんな採点かと思ったところ、各分野で一〇〇点満点のうち何点とかつけて、各政党を比較するのだという。
対する政党の方は、まんべんなく点数をとろうとする。畢竟(ひっきょう)、そのマニフェストは総花的でメリハリのつかないものとなってしまう。すべてに満点を取る。そんなことは、実現可能なわけがない。
たとえば、ある党が「モノへの投資からヒトへの投資」と唱って、子育て支援をマニフェストの目玉の一つにしようとしたら、マスコミは「バラまきだ」「財源が明確でない」とマイナスの採点をこぞって紹介。
この少子化の時代、人口減少をやがて迎える今のこの時期、子どもを安心して沢山生んで育てる社会を作ることなど、真っ先に取り組まなくてはならない再重点課題だろう。しかも政治の力によって取り組める、実現可能な政策課題だろう。
ある地域では、こどもは三人目から、医療費も学費もすべて無料だそうだ。別のある島では、その島のみんなで子どもを育てるネットワークが発達しており、子だくさんで生き生きしているそうである。外国の話ではない。日本でも成功しているところがある。
もし、他の何もできなくても、国全体として、それらの地域と同じ方向性へと大きく舵を切ることができたなら、大改革が実現することになる。何故、こんな大切なことが論議できないのだろう。何故、こんなに簡単なことが分らず、メリハリの効いた議論とならないのだろうか?
結局、私たちのうちに、大事なものを見抜く力、優先順位をつけて議論してゆく力がないからである。ケチをつけることがあまりにも得意になっているからである。マスコミは、ケチをつけるのをやめるか廃業するか、そのどちらかになってほしい。切実に思う。
減点主義をやめよう。大事な課題を取り上げ、力を認めて任せよう。「褒めて育てる」これが基本である。(了)(マイ・アーカイブズへ)
(2006文字)
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2009年8月23日日曜日