さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
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千字でたどる日本の教会史 11)ヴァリニャーノの日本人論
千字でたどる日本の教会史
11)ヴァリニャーノの日本人論
一五七九年、イタリア人アレッサンドロ・ヴァリニャーノが来日した。イエズス会総会長に直接任命された巡察師だった。当時日本では教会が二百を超え、キリシタン人口は十五万人。数字は立派。期待は大きかった。だがすぐに判明する。日本の教会の前途は非常に暗い。彼は悲嘆に暮れた。まず宣教師たちは日本語を知らなかった。日本人の良さや習慣は、知ろうともせず尊重もしなかった。
日本語は複雑で習得には長い時間が必要だ。日本人は煩瑣な言葉の習得に時間をとられているので進歩がない。「科学的」な白人は今も昔もそう考える。しかしヴァリニャーノは違った。日本語は知られているかぎり最も優秀で、極めて優雅で、ラテン語よりも語彙が豊富で思想をよく表現する。日本人の天稟の才能と理解力がいかに大きいかがわかる、と主張。
彼も日本人の欠点を認識していた。彼の見た五大悪は、好色、裏切り、虚言、残酷-生命の軽視、泥酔だった。しかし、日本人の欠陥は社会環境の結果であり矯正が可能と判断した。そして長所を列挙する。肌が白く、礼儀正しく、有能で理解力に優れ、貧しいが恥と考えず、清潔で、調和がある。名誉を重んじ、諸国王は一般に貧しく、人々の生活は欧州よりも平穏。日本ほど運命の変転が起こる国はないのに、忍耐強く、飢餓、寒さ、苦しみ、不自由を耐え忍ぶ。柔和で、感情や不平不満を表わさず、相手に不快な念を起こさせない。逆境に勇気を示し、苦悩を胸にたたみ、悪口を嫌い、訪問相手を喜ばせることのみ言う。日本人すべてが同一の教育を受けたかのような秩序と生活態度を示す。彼は結論づける。「日本人は優雅で礼儀正しく、すぐれた天性の理解力を有し…以上の点では私たちよりも優秀であることは否定しえない」。そして指導した。最も身分の低い者に対しても礼節を尽くすように。宣教師たちは日本語を修得し習慣を尊重するように。
ヴァリニャーノは語る。ここには神についての知識も真の宗教もない…常に多くの悪と虚偽がある。しかし…いかなる異教徒も日本人ほど礼節をわきまえた謙虚な人間はいない。日本の人びとは、大いに理性に従う人びとである。彼の日本人観は、ザビエルやトーレスと同じだった。九州で「あるめい様」、京都で「うるがん様」と日本人からこよなく愛されたアルメイダとオルガンティーノも、日本人を愛し日本文化を深く尊敬していた。愛と謙遜が日本人を変えていく。日本は佳き人に巡り会えた。
(1000文字)
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2012年1月1日日曜日