さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
〜 PEK’s à la carte & BookShelf 〜
さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
〜 PEK’s à la carte & BookShelf 〜
xi) 日本は世界五位の農業大国
xi)日本は世界五位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率
浅川芳裕著、講談社+α新書 二〇一〇年二月
日本は世界最大の食糧輸入国。自給率四一%は世界最低レベル。輸入停止で国民は飢え苦しむ。日本の農業は弱い。儲からない農業は保護すべし。構造的問題を抱えた日本農業に成長はない。後継者不足で耕作放棄地が増加。これが我々の常識である。農水省やマスコミが喧伝する。
しかし本書著者は問う。日本農業は弱いと誰が言ったのか?データは?日本農業規模は世界五位。先進国で二位。日米英独仏五カ国で比べて、農産物輸入総額、国民一人当たりの輸入額、輸入量、対GDP農産物輸入比率ともに第四番。生産額ベース自給率は六六%で先進五カ国中第三位。国内農産品シェアは一番。日本の輸入依存度は最も低い。生産量世界ランキングは驚きだ。日本のネギは世界一位、ホウレンソウ三位、ミカン類四位、キャベツ五位、イチゴなど六位。ジャガイモ二十二位と健闘。日本農家の生産性は著しく向上した。日本農業の実力は過小評価すべからず。日本農業弱者論は事実無根である、と。
次に食糧自給率向上政策がいかに無意味か論ずる。農水省のカロリーベース自給率を使う国は他にない。低い自給率を示して実力ある日本農業の弱さを印象づけ、輸入停止の危機感を煽る。今後の方向性は示さず不安感を漂わせる。コメ減反は「このままだと農業をやめる人と耕作放棄地が増えて自給率が低下する。転作奨励金をよこせ!」と国民を恫喝する政策。補助金(税金)と高価格という二重負担を国民に強いている。農水省は天下り団体と農協にラクをさせ、努力なしで彼らが生き残れる道を作る。すべては農水省のため。省益あって国益なし。食料自給率向上政策は農家と国民を不幸にする愚策である。
最後に日本農業成長八策なる成長戦略を提言する。地域単位の農協でなく、作物別全国組合によって世界マーケティング戦略を展開。日本の科学技術をもとに、農業関連資機材や知的財産権などのビジネスを海外展開し一兆円市場を創る。世界輸出市場での日本シェアを〇・二%から一%にし一兆二千億円の市場を創出。海外農場への進出を目指す農家を政府が支援するなど。これらで市場規模拡大、所得増大、関連雇用創出、税収増を見込む。新規需要約九兆円で既存約八兆円とあわせて先進国第一位となる。投入税金は三千億円だけ。
ここまで常識が覆されると逆に気持ちが良い。農水省も政党も馬鹿げた政策を掲げ続けてきたものだ。ウソの情報空間を破壊するインパクトある著作とただ感心する。
(1000文字)
●
2011年8月28日日曜日