さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
〜 PEK’s à la carte & BookShelf 〜
さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
〜 PEK’s à la carte & BookShelf 〜
番外編)朝鮮人六〇万人奴隷になる 〜史実小説〜
番外編)朝鮮人六〇万人奴隷になる 〜史実小説〜
チュ・ドンシク著
満蒙軍が明を滅ぼし李氏朝鮮に臣従を求めた。李朝国王はこれを拒み清に制圧される。その戦いを丙子胡乱という。一六三六年は秀吉による文禄・慶長の役の少し後である。清軍が帰路につく時、五〇万人の捕虜が漢江を渡り六〇万人が瀋陽に連行された。蒙古への捕虜も加えるとさらに多い。当時朝鮮の人口は約一千万人。何と全人口の六%以上が戦争捕虜となった。
朝鮮人捕虜の生活は凄惨を極めた。厳冬下、二千里以上歩かされ、鞭打たれ、奴隷市場に売られた。清の人々は、男女を問わず衣服を剥いで健康かどうか調べて奴隷を買った。人々は皆希望を失い、泣き叫ぶ声が通りに溢れ返っていた。本書著者は、当時の資料を土台にし朝鮮の人々の受難の歴史を語る。朝鮮女性キム・プンナム、賤民男性キル・ヨンボクなど、下層階級の人物を登場させて生き生きと表現した。史実小説と副題がついている所以だ。これが強制連行である。日本の加害者性を強調する例の話とはワケが違う。後者の犠牲者?は奴隷ではない。全員が賃金を支払われていた。大多数が自分の意志で海峡を渡った。比べるなら、在日コリアンの扱われ方は冗談としか思えないほど人道的だ。
李朝は清に、金銀・牛馬などの他、美女三千人を毎年献上することになったという。本書著者は、ある人権セミナーの結論で語る。韓国は十七世紀にも清の要求に従い、自国民を供出するかのように、毎年(女性を)数十人ずつ献上していた国だ。時代が変わったとはいえ、このような国で今さら人権を手に入れることができるのだろうか、と。これも慰安婦や性的奴隷だろう。同情を禁じえない。どの時代のどの国であっても犠牲者は存在した。なのに日本人の加害者性を一方的に強調し、人々は「従軍慰安婦」問題だけ取り上げる。強制連行と同様、残酷な日本を印象に残そうという意図から出ている。しかし彼らはまず、半島のこういった二世紀半の歴史から学び直すべきだろう。
なぜ半島は清への隷属から抜け出し、露南進策の犠牲とならずに済んだか?日清日露戦争で隣国が命懸けで戦ったからだ。どのように文明国家へ歩み出すことができたか?清に隷属した二世紀半によってか、日本の一部となった約三五年間によるのか?隣国は多額の血税を投入して半島の近代化に尽力した。迷惑だったろう。露の餌食となるほうがマシ?だが全体像を無視し日本だけ非難するのはいかがなものだろう。フェアな歴史認識が真の友好の基礎になる。
(1000文字)
冒頭写真右:
ソウル三田渡にある大清皇帝功徳碑。丙子胡乱の和議を結んで建立させられた。屈辱碑と言われ、日清戦争後に清の冊封体制から抜け出した際に埋められた。しかしその後掘り起こされたりするなど紆余曲折を経て現在に至っている。
冒頭写真左:
ホンタイジ(清太祖)に土下座する李氏朝鮮国王仁祖の銅版。
●
2011年8月15日月曜日