さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
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viii)何があっても日本経済は破綻しない!本当の理由
viii)何があっても日本経済は破綻しない!本当の理由
三橋貴明著、アスコム 二〇一一年六月
日本経済は失われた二〇年を経て破綻の道を一直線。デフレという病魔に冒され、大震災が追い打ちをかける。日本のピークはもう過ぎた。経済成長など見込めずあとは衰退するだけ。こうした悲観論が蔓延している。何とかしたい。どうするか?もともと個人的には財政再建派で増税に賛成だった。ところが正反対を言う人がいる。何故か?理解できなかった。そんな時にこの本を読んだ。
政府が支出を切り詰めることは絶対的「善」。どんな需要不足でも国債は発行しないほど良い。何の疑いもなく我々は考える。しかし著者は言う。復興税など身を切ってでも役立ちたいという思いは崇高だが、国民経済には逆効果。復興需要を増税によって摘み取らないで欲しい。企業や家計では支出の切り詰めは「善」。ところがマクロ経済においては全く違う。みんなが支出を切り詰めると需要が減る。デフレである。日本の諸問題はデフレという需要不足に端を発している。だがデフレ対策はあまり研究されてこなかった。逆に、増税、利上げ、規制緩和、構造改革などインフレ対策はいくらでもある。ではどうするか?正反対のことをする。金融緩和を拡大する。防災のための公共事業を展開する。失業者を公務員として期限付きで雇用する。規制緩和を強要するTPPへの参加は見送る。増税せず、逆に防災減税を行う。
財源は?国債で賄う。著者は述べる。日本の国債利払いは対GDP比で一・三%と主要国中最低。今は借りる方が賢明。日本の経常収支はずっと黒字。良いものが世界で売れている。円高は当然の結果。財政破綻の淵にある欧州五カ国とは違う。我々が使わないお金で国が人を雇う。結果的に増収となる。需要を産み出し経済成長に換える。インフレが心配?その時こそ増税や規制緩和をすれば良い。日本は供給能力がすべて残っている「奇跡の国」。ネジのような上流の小さい部品から最終生産材までをすべて自国で賄える国。そんな国はまずない。国内企業の熾烈な競争がその根源。競争の結果、高品質なモノとサービスが国民に提供されている。その供給能力は全力で確保すべきだ、と。
主張も根拠も明快である。既成概念に支配された頭をリフレッシュし、発想を逆転させることは何より重要だ。奇跡のような日本に自信を持ってよい。我々は必ず成長へと転ずることができる。デフレ下の増税は反対。全力でデフレ脱却しその後増税し財政再建に取組む。私は考えの舵を切るかもしれない。
(1000文字)
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2011年7月31日日曜日