さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
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ⅲ )「 驕れる白人と闘うための日本近代史」
ⅲ)「驕れる白人と闘うための日本近代史」松原久子著、田中 敏訳 2005年、文藝春秋
私たちはどれだけ歴史の真実を知っているか?誰かが書く歴史をそのまま信じやすい私に強烈な一撃を加えてくれたのがこの本だ。心ない外国人が抱く日本人に対するイメージは偏見に満ちている。欧州500年の成果を盗んだ、猿真似、封建的、残虐、個人の考えを持っていない、など。
当時、筆者はドイツで作家、評論家として活躍していた。テレビ局のゲストなどとして招かれ、日本人であるが故の偏見や批判を一身に浴びながら懸命に反論を重ねた。そんな氏が日本近代史をドイツ語でまとめた。その日本語訳である。内容は平易。原題は「宇宙船日本」。江戸時代、人々は限りある資源を循環させながら有効に活用し、階級間格差が非常に少なく富を平等に分配していた。奴隷制もなかった。民主的に物事を決め、争いごとが少なく仲良く暮らせる社会を実現していた。教育、経済、通信、交通などのインフラは、産業革命に至る準備としてすべて整えていた。鎖国時代に全くの自力で。明治以降の産業革命と日本の発展は何ら驚くことではなかった。そこで諸外国から導入した技術にもすべて正当な対価を支払った。
逆に、残酷で野蛮だったのは白人たちの方だった。欧州は貧しかった。オリエントの方が圧倒的に豊かだった。彼らは白人仲間のキリスト教徒を奴隷(スレイブの語源はスラブ人)として売り飛ばし、羨望の品々を手に入れた。戦争、暴力、虐殺でアジア、アフリカ、新大陸の富を奪った。大航海時代も、産業革命も、世界の豊かさを我がものにしようとする欲望がすべての動機だった。真の動機を突きつけられて白人は猛反発する。氏に街頭で平手打ちを食らわせるほど。「腹立たしい。でも真実だから仕方がない」と言わせるほど。なお、本書のドイツ語副題は「真実と挑発」。真実を示され挑発と受けとる人々の反発をさす。
氏はキリスト者ではない。キリスト教に批判的でもある。しかし本書には、キリスト者の世界観の偏りをただす真実がある。パラダイムシフトをもたらす力がある。私は、日本人宣教のための福音の文脈化(コンテキスチュアリゼーション)を心から願うようになった。福音が本格的に宣教され始める前から日本は創造主なる神さまから「意外と」愛されていた。主に愛されている日本に生まれて良かった。特別啓示としての主の愛を日本人に本気で伝えたい。そして、日本人にはそれを受け入れる素地がある。そう思い始めるきっかけを作ってくれた本だった。(1000文字)
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2011年4月9日土曜日