さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
〜 PEK’s à la carte & BookShelf 〜
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xiv) 日本と世界を揺り動かす物凄いこと
xiv)日本と世界を揺り動かす物凄いこと
増田悦佐著、マガジンハウス 二〇一一年八月
世界の先進国も新興国もほとんどは一部のエリートが牛耳るエリート文明。対して日本は一般国民がしっかりしている大衆文明。日本の指導者は頼りないが、そのまま余計なことを口出しせずにいてくれた方が良い。地球温暖化は科学的根拠がない史上最大の詐偽事件。その陰謀の張本人はエリートの一角を占めるオイルメジャー。国家ぐるみの粉飾決算をやっている米国の経済は必ず破綻する。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン(PIIGS)は軒並みデフォルトの危機でユーロはやがて消滅。技術の裏付けがない中国経済は砂上の楼閣。バブル崩壊はすでに始まっている。生き残るのは日本だ!デフレと円高で日本経済はさらに強くなる!政府、官僚、メディアに騙されるな!彼らは「このままでは日本は衰退する」と危機感を煽るだけ。事実を見抜いていない。我々は望みをもってこのまま頑張ろう。以上が本書の内容である。この本は常識を覆す主張で満ちている。
著者はすごい速度で本を出版する経済アナリスト。a)内向きの世界帝国 日本の時代がやってくる。b)日本文明・世界最強の秘密。c)格差社会論はウソである。d)クルマ社会・七つの大罪、など。一貫して主張しているのは日本経済の強さと欧米中などの脆さである。著者に対する評価は大きく分かれる。「深い洞察力に裏付けられた鋭い指摘」という意見から「ホントとは思えない」「懐疑的」「トンデモ本」というレッテル貼りまで。歯に衣を着せずにズバズバ主張する姿勢に喝采を送るファンがいる反面、アクが強過ぎる、本人の経歴はエリートそのものでその主張と矛盾する、重複が多過ぎる、コピーペースト本!と嫌う人たちもいる。両極端である。
現在の日本には悲観論が蔓延している。新聞もテレビも日本の暗い部分に焦点を当てる。逆に海外のことは明るいニュースを紹介する傾向がある。悲観論はマスコミの宣伝によるだろう。しかし著者は他人があまり使わない資料を用いて反論する。「ダメなのは日本ではない。日本以外の世界の方だ」と。日本には他国にないポテンシャルやファンダメンタルがある、と資料を示して日本の良いところを評価し元気づけてくれる。著者のファンや信者になれとは言わない。しかし、全世界を公平に眺め、統計資料を土台とし、良いところを評価する姿勢は学ぶべきではないだろうか。我々はバランス感覚に欠けている。著者はその偏りを正そうとしていると考える。
(1000文字)
<脚注>
1)地球温暖化は科学的根拠がない史上最大の詐偽事件:年平均気温上昇と二酸化炭素排出量増加の相関はごく短期間で見られるのみ。相関が見られるのは太陽の黒点活動が活発な時期と一致する一九七五〜一九九八年の二十三年間だけ。それ以外は全く相関なし。特に一九九八〜二〇〇九年の十一年間で大気温は〇・六度下がっている。地球の大気温は、直近の氷河期が終了した一八三〇年から百年で〇・五度上昇したが、二十世紀通算でも百年で〇・五度の上昇にどどまっている。
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2011年10月2日日曜日