さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
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xv) 島国チャイニーズ
xv)島国チャイニーズ
野村 進著、講談社 二〇一一年八月
日本人の八割が中国に親しみを感じない。無理もない。中国人留学生らによる福岡一家四人殺害事件や大分恩人殺害事件、毒入り餃子事件、反日暴動、尖閣諸島での漁船衝突事件と中国政府の高圧的対応などが続くからだ。こんな反中、嫌中が蔓延する日本に住む中国人は何を考えどのように生きているのか?ノンフィクション作家の著者は、二百人以上の在日中国人に取材した。マスコミ報道では知ることのできない、彼らのひたむきな人生模様を紹介する。
私も日本人社会に入りたい。日本に恩返ししたい。日本は頑張れば認められるからいい。帰りたいとは思わない。意志の強い、向上心に富んだ中国人居留者は想像よりずっと多い。神戸中華同文学校関係者も次のように教える。日本の方々と仲良くしなさい。私たちは日本に住まわしてもらっている。だから、日本人に迷惑をかけたら絶対にいけない。日本にいる立派な人たちを尊重しなければならない。山形の農家に嫁ぎ離婚や娘のうつ病を経験した女性も次のように語る。日本に来てよかった。娘も「日本に来てよかった」って。私はこっちに来てから人間がやわらかくなった。だんなも周りの人も娘に温かく接してくれて、日本人の温かさをすごく感じた。人生の中で大きなもの、お金じゃ得られないものを得た。
在日中国人の大半が、日本は暮らしやすい、幸せ、と答える。日本が気に入らなかったから住まないですよ、とも。安全、清潔、便利、きめ細かなサービス。何にも増して、東日本大震災で世界を驚嘆させた日本人の「共同体主義」が受け入れられている。対極にある社会から来た人々には違いがよくわかる。たとえば次の如くである。見返りなく親切にし人の秘密は守る。信じられる。これが日本では普通である。親切には必ず『裏』がある。人から聞いたことは何でも別の人に言う。信じられない。中国ではそれが普通。だがら彼らは同胞の中国人よりも日本人のほうに信頼を寄せる。
出自にかかわらず悪い人も良い人もいる。欠点のない人はいないし、みな長所を持ちあわせている。しかし我々はレッテルを貼りたがる。○○人は云々、あの人は云々と。国際交流協会会長の日本女性は言う。中国という国はいいかげんでどうしても好きになれない。でも留学生にそういう気持ちを持ったことは一度もない、と。その方と同様に、国家と人を分けて考えたいものだ。欠点を認めた上で日本が好きだと言ってくれる人たち。大切にしたい。
(1000文字)
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2011年10月10日月曜日