さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策 

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 ここまで、「鏡像段階」の次の「言語獲得段階」と「自我主体性の獲得段階」について述べてきた。その概念は次のようなものである。


 万能感(ファルス)、去勢、言葉、言葉という他者を体内に呑み込むこと。象徴界、現実界、想像界という機能(領界)からなる自我主体性を獲得することである(図21)。


 次の何枚かの図で、象徴界、現実界、想像界について、もう少し詳しく説明を加える。


        

                   図21 言語の獲得


 ラカンは、現実界、象徴界、想像界を頭文字でRSI と呼んでいる。フランス語でDe Réel、le symbolique、l’Imaginaire の三つである(図22)。


        

                図22 象徴界、現実界、想像界


 ラカンは、自我の中の象徴界を、人間の自由な認識やコントロールが及ばない領域と考えた。精神分析のみがその認識とコントロールを一部可能にする。言葉によって成り立つ象徴界が存在している。それが精神分析を成立させている前提となっているとした(図23)。


        

                   図23 象徴界(1)


 ラカンによると、象徴界とは「人間存在を根本的に規定する言語活動の場」である。個人と個人、心と心、意識と無意識、心と社会を結びつける言葉のネットワークと考えるとよいらしい(図24)。


        

                   図24 象徴界(2)


 現実界とは「触れたり所有したりできない、世界の客体的現実」を言う。言語では決して語り尽くすことができない。しかし、言語によって語るしかない。こういう逆説的な性格を持ち合わせている。例えば、大事件の決定的瞬間、背景、全体像などがあげられる(図25)。


 列車事故や殺人事件などの大事件は現実に起こったことではあるが、その全貌を言葉で語り尽くそうとしても、決してできない。しかし、その一部であっても、言語によってしか表現できない。どれをとっても触れたり所有したりはできない。それが現実界であるという。


        

                   図25 現実界


 想像界とは、「誰しも漠然とイメージするが、その正確な描写には大変な努力を要する抽象的な世界」「しかも言語(象徴界)に縛られている世界」「われわれが頭の中で思っている世界」のことである。「日常」「平和」「不幸」などが例として挙げられるという(図26)。


        

                   図26 想像界


 以上見てきたように、自我の主体性を構成する三つの中では「象徴界」という機能が最も大きなカギを握る。言語は象徴界のものである。「鏡像段階」を経て「主体性を獲得する」ということは、言語の介入を受ける、言葉を持つに至る、象徴界に参入するということを意味する(図27)。


        

                 図27 重要な象徴界への参入


 ラカンの発達理論では、子どもは「言葉」によって鏡像的段階から主体性を持つ成熟したステージに進んで行く。


 さて、患者さんと家族は、さまざまな場面で鏡像的関係の苦しさを味わっている。次に取り扱うのは、鏡像的関係で居続けることのリスクについてである。(つづく


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