さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
What should we do now? Explore the history of Japan and the world.
〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
What should we do now? Explore the history of Japan and the world.
〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
xiii’’’’’’’’’’’)番外編10 過激な隣国と日本(Ⅱ)配慮の功罪
尖閣諸島に関わる諸問題
尖閣諸島を日本が実行支配しているとはいっても、石垣島の漁民が尖閣諸島沿岸へ漁に出向くことはないらしい。中国や台湾の警備艇に拿捕される恐れがあるからだそうだ。近くの排他的経済水域であってもなおのこと、漁など出られたものではない。
ところが中国の漁民は日本の領海に入っても拿捕されるどころか安全である。今回のように故意にぶつかるなどカゲキなことをしても釈放されるだけ。帰国すると英雄扱い。
一九七〇年頃の国連海洋調査で、尖閣諸島および東シナ海にイラク一国分の埋蔵量に相当する石油および天然ガスが眠っていることがわかり、台湾や中国が慌てて尖閣諸島の領有権を主張し始めた。
そういった資源開発の面においても、日本政府は腰を据えた行動を全く起こしていない。中国が先行して東シナ海のガス田開発を行ない、日本は共同開発を提案するが交渉は難航。日本側の排他的経済水域でのガス田開発すら日本政府は日本企業に許可していない。
尖閣諸島に日本人が上陸することにも慎重で、許可が必要とされているようだ。漁船が衝突してきた際のビデオが動画投稿サイトに流出して日本政府も国会も混乱しているが、早い段階で公開に踏み切らなかった政府に対して、国民から失望と怒りの声が上がっていた。
図2 尖閣諸島沖で中国漁船が日本の海上保安庁巡視艇「みずき」に体当たり
すべては相手を刺激しないようにという配慮からだろう。しかし、たとえば動画を流出させた人が逮捕され罪に問われるとしたらどうだろう。尖閣諸島に上陸して逮捕され罪に問われる人がいるとしたらどうだろう。
中国人の危険で悪質な不法行為は全くお咎めなし。他方、日本人は罪に問えるかどうか意見の分かれるほどのことで厳しく罰する。まさにパロディーかブラックジョーク。それ以外に言いようがない。国民はさらにやりきれない思いを抱えることになる。
残念ながら、日本の実行支配など絵に描いたモチのように見える。政府は国民とその経済活動の安全と将来を本気で守ろうとしているのだろうか。そういった態度は、隣国から見透かされ歓迎され、大いに侮られているのではないか。そう心配されている。
カゲキな言動に向き合うには
別の角度から、つくづく考えさせられることがある。反日デモで「琉球回収」「沖縄解放」などの挑発的なスローガンを掲げたり、暴徒化してカゲキな行動をとったりするのは勇気ある人々だろうか?本当に勇気があるのは決して彼らのことではないだろう。
彼らが叩くのは、自分たちが処罰されたり命の危険にさらされたりする恐れのないターゲットに過ぎない。日本を攻撃しても誰も危険な目に遭わない。実効的な反論や反発を一つもしない。実におとなしい。だから標的にするのである。
彼らは「反日」「愛国無罪」を主張している限り、中国当局から寛大に扱われるだろう。中国政府が恐れているのは、若者が「反日」に向けている攻撃の矛先を自分たちに向けてくることだ。中国共産党が批判されれば、デモ参加者には断固たる処罰が下されるだろう。
日本に対する強硬姿勢をどう受けとめるか。実は彼らは臆病なのかもしれない。そんな彼らを、私たちは過度に恐れる必要はないのかもしれない(脚注8)。
対日強硬姿勢を示すのは中国だけではない。韓国も激しい。竹島問題や教科書などの歴史認識問題では日本国旗を焼き払い、官民挙げて「歴史歪曲」「妄言」と騒ぎ立てる。
ところがその韓国も、こと中国に対しては日本に向けてするほど強硬姿勢は見せないようだ。良い例は朝鮮戦争に関する認識問題である(脚注9)。(つづく)
脚注
8)逆に、中国国内で本当に勇気があるのは、投獄を恐れずに政府を批判して民主化を提案する人々だろう。天安門で犠牲になった人々や今年のノーベル平和賞受賞者となった劉暁波(Liu Xiaobo)氏が該当するだろう。
9)http://sankei.jp.msn.com/world/china/101028/chn1010282054010-n1.htm
「朝鮮戦争で韓中対立、習近平発言に反発」
「中国の習近平国家副主席が最近、朝鮮戦争60周年の記念行事で『(あの戦争は)平和を守り侵略に立ち向かった正義の戦争』と発言したことに韓国が強く反発し、あらためて韓中の“歴史戦争”になっている。
北朝鮮が中ソの支援の下で韓国に武力侵攻し、中国軍が介入した朝鮮戦争(1950-53年)をめぐって韓中には、以前から“歴史認識”の対立があった。韓国は当然、『中国の侵略』という立場だが、92年の国交正常化時を含め中国にことさら『謝罪と反省』を要求することはなく、うやむやにしてきた。韓国はまた、過去2回の南北首脳会談の機会も含め、北朝鮮に対しても『謝罪と反省』は求めていない。
今回の習近平発言は25日、北京で行われた『中国人民支援軍抗米援朝戦争60周年』の行事で参戦老兵たちを前に行われた。韓国ではまずマスコミをはじめ世論が強く反発。政府も『(あの戦争は)北朝鮮の南侵で起きたというのは国際的に公認された歴史的事実』とし、中国に対し国連安保理常任理事国で、国際社会の責任ある国家としての努力を期待するとの論評を発表した。政府としては比較的穏やかな対応で、外交問題にする考えはないようだが、マスコミなど世論は中国の『侵略戦争居直り』という北朝鮮擁護の姿勢を印象付けるものとして、あらためて中国警戒論を強調している。とくに今回は、発言者が次期指導者に確定した習近平副主席だったため『中国の新指導者の歴史認識』として注目され、同じく後継者が明らかになった北朝鮮との“親密”ぶりと併せ今後を懸念する声になっている。
一方、習近平発言が問題になった後、中国では、韓国への『反論』のかたちで人民日報や新華社に、戦争の発生と中国の軍事介入を分けて論じる学者の論文が紹介されたという(28日付の韓国各紙)。これは、戦争発生は南北の内戦だったとし、北朝鮮の責任を間接的に指摘する一方、中国軍参戦は反撃に転じた米韓軍が中朝国境に迫ったため中国の利益と安全を守るためで正当だった、という主張だ。しかし朝鮮戦争は初期の4カ月を除き北朝鮮側の主力は中国軍で、100万人規模の大兵力で介入し南北境界線を越えてソウルの南方まで侵攻している。韓国では今年、『あれは中国軍との戦いだった』とする回顧モノが目についた。
中国との歴史認識の対立で韓国は、日本に対するのとは違っていつも腰が引けている。日本には官民挙げて『歴史歪(わい)曲(きょく)』『妄言』と大騒ぎし、すぐ外交問題になる。しかし中国に対しては今回、『歴史歪曲』や『妄言』の非難はない。」
(2728文字)
2010年11月13日土曜日