さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
What should we do now? Explore the history of Japan and the world.
〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
さてどうしましょう:日本と世界の歴史散策
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〜 PEKのひとりごと PEK’s soliloquy 〜
ⅷ)絶対視されるワ 日本の草の根民主主義(Ⅲ)強固な先入観
先入観 vs 真の姿
こうした話をしても信じてもらえず、さまざまな反論が予想される。
どんな文明や社会の中にも問題は存在する。その社会なりの矛盾があり、悪い人々はいる。しかも、時代は武士の支配する封建制の世の中で、因習や迷信がはびこり、人々は不自由でがんじがらめにされて、もちろん基本的人権などは無視されていた頃である、など。
小説、芝居、映画、テレビなどでは、悪代官と圧政に苦しめられる農民というステレオタイプな図式で作られている。あの時代はひどかった。それに比べ今は何と幸せなのか。その頃に生まれなくて良かった、などなど。
私たちの先入観は、なかなかぬぐい去れるものではない。こうした神話から自由になり、歴史の事実に向き合うことのできる人は幸いである。
話し合い、民主主義が、農民だけでなく他の身分においても日本に定着していた事実、歴史上、かつての日本人がどれだけ恵まれていたかは、別項目を立てて詳しく取り上げる。
ともあれ、ここでは次のことを強調しておこう。日本では「話し合い」が尊重され、農民には自治が与えられていた。これは全世界的に見て、たいへん珍しく恵まれた状況だった。
ところで、我々がなかなか自由になれない神話は他にもある。日本国内にある矛盾点を指摘(糾弾)し、改善を迫るために使う、例のあの手である。日本はガイアツによってしか変わらない。そういって自ら相手側にガイアツをかけようとする(脚注14)。
海の向こうでは素晴らしい政(まつりごと)が行なわれ、民は幸せに暮らしている。特定の国の、特定の事柄が取り上げられ賛美される。
昔は唐、随、天竺、近代では欧州。第二次世界大戦後は、どんなことを主張したいかにより、米国、中国、戦後を清算した(といわれる)ドイツなど。私たちはなるほどと受け入れる。世論が形成されていくこともある。
あるグループは、文化大革命時代の中国を賛美した。北朝鮮を「この世の楽園」と宣伝して帰還事業を後押しした。
どれほど間違った情報を流していたのかは、歴史が明らかに証明している。宣伝文句に踊らされる形で人生の選択をし、塗炭の苦しみを味わった人々もいただろう(脚注15)。しかし、情報を流して人々を困難におとしいれた側は、何の責任もとらず謝罪もしない。
発信されている情報が客観的で真実に基づいているかどうか、私たちは自ら判断しなければならない。そこに、歴史、比較文化学などから真理と知恵を学んでいく重要性がある。
日本で専制(独裁)政治は長続きしない
さて、日本人が話し合いを大切にしていたという本題に戻ろう。日本における独裁制(専制政治)についての議論である。
政治学的な厳密な意味での独裁制(脚注16)とは別に、「支配者が独断で思いのまま事を決する政治」のことを専制政治と呼び、その支配者を独裁的な指導者と呼ぶことがある。
平清盛、織田信長、井伊直弼、大久保利通など、権力を一手に集中させた独裁的な指導者は、概してロクな死に方をしていない。
平清盛は熱病に冒され苦悶のうちに死んだし、織田信長は明智光秀の裏切りにあって壮絶な最後を遂げた。井伊直弼は桜田門外の変で水戸浪士に暗殺され、大久保利通も紀尾井坂の変で石川県氏族島田一郎らによって暗殺された。
日本では独裁者を嫌う傾向がある。専制政治は長続きしない。(つづく)
脚注
14)ガイアツ:海外の諸国はガイアツがなくても変わることができたか?答えは「No!」である。どこの国でも、隣の国と戦争をし、殺し合いをし、互いに干渉し合い、時に良い影響を与えあい、ガイアツを掛け合った。ガイアツのせいで、どの国も変わらざるを得なかったのである。
15)http://ja.wikipedia.org/wiki/在日朝鮮人の帰還事業
16)http://ja.wikipedia.org/wiki/独裁制:反対勢力を弾圧し、表現、言論、集会、結社の自由を認めず、極端な場合には個人の生存権、幸福に生きる権利まで奪ってしまう(政治犯の処刑、投獄)政治体制のことを独裁制と呼ぶ。
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2009年5月26日火曜日